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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)8371号 判決 1984年9月28日

原告

株式会社ナムコ

右代表者

中村雅哉

右訴訟代理人

多賀健次郎

茅根三千財

武田仁宏

被告

酔心興業株式会社

右代表者

山根泰二

被告

株式会社酔心

右代表者

山根泰二

被告

株式会社永楽

右代表者

山根泰二

右三名訴訟代理人

米丸和實

佐藤直

主文

一  原告に対し、被告酔心株式会社及び被告株式会社永楽はそれぞれ金二一五万九一五二円、被告株式会社酔心は金一〇七万九五七六円並びにそれぞれ右各金員に対する昭和五六年六月一五日以降支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨の判決及び主文第一項につき仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一請求の原因

1  原告は、昭和五四年五月ころから昭和五五年四月ころの間に、開発課において九名から成るプロジェクトチームにより、ビデオゲーム「パックマン」(以下、括弧書きで「パックマン」と表示する場合は、ビデオゲーム「パックマン」のことをいう。)を作成し、同年五月二二日、原告の著作の名義の下に、これを公表した。

2  「パックマン」の内容

「パックマン」は、追跡劇をテーマにしたアニメーション映画である。その内容は、以下のとおりである。

(一) 影像の基本的構成

登場人物は、①オイカケアカベイ、②マチブセピンキー、③キマグレアオスケ、④オトボケグズタと各命名されたモンスターと、⑤パックマンである。

画面上には、目録(一)②のとおりの迷路と画面中央にモンスターの巣が表示される。迷路上には二四〇個のエサと四個のパワーエサが点在し、パックマンは、エサを食べながら移動する。パックマンの移動は、操作レバーによりプレイヤーが操作する。

パックマンの移動に応じ、モンスターが、それぞれの個性に応じた型でパックマンを追跡し、これを食べようとする。しかしながら、パックマンがパワーエサを食べると、この関係が一時逆転し、パックマンが、モンスターを追跡し、これを食べることができる。パックマンがモンスターを食べると、高得点が得られる。

(二) 登場人物の説明

(1) モンスター(目録(一)①参照)

イ 常に服のすそをヒラヒラ動かし、進行方向に目を向け迷路上のエサの上を通過して移動し、パックマンの移動に対しそれぞれ左記の性格を有している。

① オイカケアカベイ 追跡中はパックマンを最短距離で追跡し休息中は画面右上付近を動き回る。

② マチブセピンキー 追跡中はパックマンの口の向いている三つ先のマスに向い待伏せをし、休息中は画面左上付近を動き回る。

③ キマグレアオスケ 追跡中は①とパックマンを中心とする点対称のマスを目指し、休息中は画面右下付近を動き回る。

④ オトボケグズタ 追跡中はパックマンから半経約一三〇ドットの外では①の性格をもつてパックマンを追跡し、右半径内ではパックマンの移動と無関係に動く。

ロ 前述のとおりパックマンがパワーエサを食べるとモンスターがパックマンを追跡するという関係が逆転するが、この時モンスターはこん色のイジケ顔となり逃走音を発しながら移動方向を反転し逃げ出す。(目録(一))。パックマンがイジケモンスターにかみつくと効果音とともに画面上に得点が表示されかみつかれたモンスターは目玉だけとなつて巣に戻り、巣に戻るとともに再生されて出てくる(目録(一))。

また、逆転した状態から元に戻る直前にイジケモンスターは点滅しその旨警告する。

(2) パックマン

パックマンは、プレイヤーが操作レバーを上下左右の四方向に動かすことにより、指示どおりの方向に進行し、常に進行方向に口をパクパクさせ、エサと口が一致した時にエサを食べる。そしてモンスターに食べられると効果音とともに消滅する(目録(一)⑦)。

(三) 影像の説明

「パックマン」の影像は、(1)アトラクト影像、(2)プレイ影像、(3)挿入影像に分析することができる。

(1) アトラクト影像においては、登場人物とゲームルールの説明及び擬似プレイによるゲームの説明がされる(目録(一)①、②)。

(2) プレイ影像は、ゲーム機にプレイヤーがコインを投入した後、目録(二)の楽譜の音楽が演奏され、プレイヤーがパックマンをどの道順で移動させ、どこで停止させるかによつて、各モンスターの移動順序に変化が生ずるが、その変化は有限である(目録(一)ないし③、⑪、⑫、⑮、⑯、⑲ないし)。

(3) 挿入影像は、目録(三)の楽譜の音楽に合わせて、三種類のアニメーションが画面に映し出される。

第一影像は、画面右端中央から左端へ赤色モンスターがパックマンを追跡し、いずれも左端に消えていき、次に消えた箇所から、巨大化したパックマンが、紺色に変わつたモンスターを追跡し、画面右端へ消えていく(目録(一)⑨、⑩)。

第二影像は、画面ほぼ中央に白色のピンが表示され、右端からパックマンが現われ、左へ移動し、続いてパックマンを追つて赤色モンスターが右端から左へと移動するが、白いピンに赤色モンスターの服のすそがひつかかり、服が伸びてモンスターは左へ進行できなくなる。やがて、服がちぎれ、モンスターは、目を上方に向け、次に服のちぎれた方を見るため右下を向く(目録(一)⑬、⑭)。

第三影像は、右端からパックマン、それを追つて服に継ぎをした赤色モンスターが現われ、左へ消えていき、左へ消えた後、脱がされた服を引きずつて赤色モンスターの中身だけが、腰を動かしながら、左端から現われ、右端へ消えていく(目録(一)⑰、⑱)。

(四) 以上のとおり、「パックマン」は、単純なゲームを越えて、それぞれの個性を持つたモンスターとパックマン(それはプレイヤー自身である。)とのスリリングなチェイサー物アニメーション映画である。すなわち、モンスターの目の動き、その表情は非常にコミカルである一方、モンスターの移動速度等により、プレイヤーをして肉迫するモンスターからの逃走を非常にスリリングなものとしているのである。また、挿入影像は全くアニメーションそのものである。

3  「パックマン」の映画の著作物該当性

「パックマン」は、以下に説明するおとり、著作権法上の映画の著作物に該当する。

(一) ビデオゲーム機の説明

(1) ビデオゲーム機の特徴

ビデオゲーム機とは、コンピューターシステムの記憶装置(ROM)に収納されたプログラム(命令群とデータ群)を中央処理装置(CPU)により読みとり、順次その命令を実行してブラウン管上に移転影像及び固定影像として映し出し、また、その移動変化に応じて音楽及び効果音をスピーカーから発生させる、ゲームプレイヤー介入型コイン作動式ゲーム機である。

ゲームプレイヤーは、ブラウン管上の移動影像及び固定影像の変化を見ながら、操作部を操作して特定の影像をコントロールして、両影像が表現するゲームストーリーに参加して楽しむことができる。

(2) ビデオゲーム機の影像

ビデオゲーム機の影像は、プレイヤーの介入が可能なプレイ影像並びにプレイヤーの介入が不可能で、ROMに収納されたプログラムに基づいて一定時間単位の連続影像が繰り返し表現されるアトラクト影像及び挿入影像の三つに分けられる。但し、挿入影像がないものもある。

イ プレイ影像

コイン投入後に表現される影像である。プレイヤーは特定の影像をコントロールし、移動影像及び固定影像が表現するゲームストーリーに参加でき、一定条件(時間又は失敗の回数)になるまでプレイできる。効果音、音楽が発せられる。

移動影像及び固定影像は、プレイヤーの操作による特定影像の変化に応じた変化をするため、プレイヤーの操作に基づいて全影像が変化している様に見えるが、プレイヤーの操作に基づいて移動影像及び固定影像に一定の変化をさせる命令がプログラムの命令群の中に組み込まれているのであつて、プレイヤーが変化させているのではない。したがつて、あるプレイヤーが行なつたと同一の操作を別のプレイヤーが行なつた場合には、移動影像及び固定影像の変化は必ず同一となる。すなわち、プレイ影像はROMに収納されたプログラムに基づいて現われる。

ロ アトラクト影像

ゲーム終了後又は電源入力後コインが投入されるまでの間、規則的に繰り返し表現される影像である。この影像は、ROMに収納されたプログラムに基づいて現われる。音楽及び効果音は出ないことが多い。

ハ 挿入影像

プレイヤーがプレイ中に一定条件を満たす毎に表現される影像である。この影像は、ROMに収納されたプログラムに基づいて現われる。音楽及び効果音を伴うことが多い。

(3) ビデオゲーム機の影像表示原理及び音の発生原理

イ 全体の構成

影像並びに音楽及び効果音と関係のある部分は、ROM、制御回路、表示装置及び操作装置であるので、これらの部分を次に掲げる図に基づいて説明する。

図中のAは表示装置(ブラウン管とスピーカー)である。この装置はBの制御回路から出力される電気信号を受け、それらに応じて各種の影像並びに音楽及び効果音を外部に表現する。

Bの制御回路とは、C'及びCのROMに収納されたプログラム(命令群及びデータ群)をCPUにより読みとり、表示装置Aのブラウン管上のどの場所に表示するか、どのように移動させるか、スピーカーからどのような音楽、効果音を発するか等を電気信号として表示装置に出力する。また、プレイ影像表示時には、Dの操作装置から電気信号を受け、それに応答するように作られた前記プログラム(命令群)に基づいて同様に電気信号を出力する。

操作装置Dは、プレイヤーによつて操作され、制御回路Bから送られてきている電気信号をスイッチやボリュウム等によつて変化させ制御回路に送り返す。

ロ ブラウン管の動き

家庭用テレビのブラウン管の画面が、走査線の走査によつてフレームが三〇分の一秒ごとに入れ替わつていることは知られているが、ビデオゲーム機のブラウン管の画面は、同様に六〇分の一秒ごとに入れ替わつている。この入れ替わりを利用して、像の変化を表示している。たとえば、ある像の画面上の位置を少しづつ変化させたフレームを入れ替えれば、人間の目にはその像が移動しているように見える。

ハ プログラム(命令群とデータ群)

命令群とは、多数かつ多種の命令を二進数にした上、電気信号の形でROMに記憶させたものである。

データには、影像データと音楽及び効果音のデータがある。影像データとは、ブラウン管に表現される絵柄、文字等の影像をそのままあるいは分割して、デジタル形式の二進数にした上、電気信号の形でROMに記憶されているデータをいう。音楽及び効果音のデータとは、音程、音質、音量の三つの要素に対応する周波数、波形、振幅をそれぞれ二進数にした上、電気信号の形でROMに記憶されているデータをいう。データ群とは、多数かつ多種のデータをコード番号化してROMに記憶させたものである。

プログラムはこのような命令群とデータ群からなる。

ニ 影像の変化

たとえば、(一)コード番号1の影像データを表示しろ、(二)表示位置はA地点、という命令がROMに記憶されているとすれば、画面上のAの位置にコード番号1の絵柄が表示されることになる。したがつて、ブラウン管画面の入れ替わりを利用して、A地点の絵柄を消して次にB地点に同一の絵柄を表示し、それを消して次にC地点に同一絵柄を表示すればA地点の絵柄がB地点からC地点に移動した様に表現できる、絵柄の移動速度は六〇分の一秒ごとに表示するのを六〇分の二秒ごとに表示すれば遅くなる。この場合の絵柄は動物であつても景色であつても良い。また、同一地点に連続してコード番号1、2、3、4の絵柄を順次表示して消去すれば、ある絵柄を連続変化させる表現ができる。たとえばコード番号1〜4に異なつた爆発の絵柄が記憶されていればリアルな爆発シーンが得られる。

ホ 音の発生

ROMに記憶されている音の長短や連続についての命令によつて、音楽及び効果音のデータが音信号として出力され、これを増輻してスピーカーを駆動することにより音楽及び効果音が発せられる。なお、効果音に関し、その専用発生回路を持つ場合がある。

(4) 影像及び音の表現

(3)において影像及び音の表示及び発生原理を説明したがROMを除く装置は全て表現手段に過ぎない。どの様な音をあるいは音楽を、どの様なタイミングで発生させるか、さらにどのような絵柄をどのように変化させるか等については、人が作曲、作画及び創作等をしなければならない。この創作の結果をプログラム(命令群及びデータ群)としてROMに記憶させて初めて、創作者の思い通りの影像や音が表現されるのである。

(二) プログラム、ROM及び影像の関連

(1) 前述のビデオゲーム機の影像表示原理及び音の発生原理から明らかなとおり、「パックマン」の映画の効果に類似する視聴覚的効果を生ぜしめる構成要素は、プログラム(命令群とデータ群)を収納したROMである。

(2) 右の構成要素たるROMの形成過程は次のとおりである。

イ 第一の段階は、登場人物の絵柄・表情、各登場人物の関係設定、ストーリーの作成、各場面における効果音、スタート及び挿入音楽の作曲、色調等のビデオゲームの内容についての創作がなされる。右の内容が著作権法第二条第一号にいう「思想又は感情」に該当することは、この要件が極めて広く、単なる「考え」とか「気持」を含むものと解されていることから疑問の余地はない。

ロ 第二段階は、第一の段階で与えられた問題解決(諸条件の完全充足)のための論理的ステップを定めたフローチャートの開発である。

ハ 第三の段階は、フローチャートに基づき、フォートランなどのプログラミング言語により書かれたソース・プログラムの作成である。

ニ 第四の段階は、ソース・プログラムを、コンピューターが理解できる機械言語に一対一に対応した記号語(アッセンブラ言語)に翻訳したアッセンブリ・プログラムの作成である。

ホ 第五の段階は、アッセンブリ・プログラムを機械言語にした上で、一連の電気衝撃を与える装置に転換したオブジェクト・プログラムの作成である。そして、ROMはこのようなオブジェクト・プログラムを収納したものである。

(3) ところで、ソース・プログラムのように「書かれた形態」のプログラムは、それ自体著作物として保護されるが、これをオブジェクト・プログラムとしてROMに収納し、そのアウトプットとして表示装置上に表現される影像、音は、ROM形成過程の第一の段階に示した「思想又は感情」を視聴覚的に表現するものであつて、「書かれた形態」のソース・プログラムとは表現方法において完全に異なつている。

したがつて、その著作物としての保護は、表現形態に応じた映画の著作物としてのものであるべきである。

(4) 右のソース・プログラムと影像、音等との関連を、一般の映画と比較すればその関連はより一層明らかとなる。

すなわち、映画の製作過程は基本的には監督・脚本及び演出、並びに音響及び作曲等一連の影像作出のための創作的活動と作出された影像の録画ないしフィルムへの固定という機械的活動とに分析し得る。

これをビデオゲーム機についてみるに、前述のROM形成過程の第一ないし第四段階は影像作出のための創作的活動と考えられるし、同第五段階はフィルムへの固定という機械的活動と評価し得るところである。

したがつて、脚本自体が書かれたものとして言語の著作物として保護される一方、一旦これが他の創作的活動と相まつて映画化されるや映画の著作物として独自に保護されるに至ると同じく、ソース・プログラムを言語の著作物として保護する一方、影像化されたものを映画の著作物として保護することは、著作権法上何ら支障の存しないところである。

(三) 映画の著作物の要件該当性

(1) 映画の著作物は、著作権法第二条第三項で定義されており、一般に、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものが、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ物に固定されているもの」と解されている。

(2) 「パックマン」が右の要件に該当するものであるか否かについてみるに、「パックマン」は、前記のとおりのゲーム・ルール及び追跡劇をテーマとするストーリーを内容とするものであり、その表現方法は、ROM形成過程について述べたとおり、創作性を有するものである。更に「パックマン」が文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属することも、「パックマン」が追跡劇をテーマとすること及びその美術的効果、音楽的効果を具備することからも明らかである。

また、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されていることも、「パックマン」が動きを感じさせる一連の連続的影像より成り立つていること及び前記2のとおりの視聴覚的効果を有していることから、これを肯定することができる。

更に、「パックマン」の影像表現、すなわちそのキャラクター、表現されたストーリー及びルール、音楽等はビデオゲーム機の説明より明らかなとおり、ROMに固定されている。

(3) 以上のとおりであるから、「パックマン」が映画の著作物に該当することは疑問の余地がない。

4  仮に「パックマン」が著作権法第二条第三項に規定する映画の著作物に該当しないとしても、右「パックマン」の視聴覚的表現は同法第二条第一項第一号に規定された著作物に該当する。すなわち、著作権法は、第一〇条に例示された著作物以外のものは、著作物保護に関する明示規定を置いていないので、右例示以外の著作物の著作権は、性質上表現形成が類似する第一〇条に例示された著作物に準じて保護するほかはない。したがつて、「パックマン」の視聴覚的表現は、同法第二条第一項第一号及び第二六条の準用ないし類推適用により保護されるべきである。

5  被告らはそれぞれ「マイアミ」との名称で都内で多数の喫茶店を経営しているが、昭和五五年一〇月以降、原告の「パックマン」の映画の上映権を侵害する行為であることを知りながら、もしくは過失によりこれを知らないで、被告酔心興業株式会社(以下「被告酔心興業」という。)及び被告株式会社永楽(以下「被告永楽」という。)においてはその経営する店舗でそれぞれ少なくとも二台、被告株式会社酔心(以下「被告酔心」という。)においては、同じく少なくとも一台の「パックマン」の無断複製ビデオゲーム機を設置してこれを上映している。

6  原告は、被告らの右「パックマン」の上映権の侵害により損害を被つた。ところで、「パックマン」ビデオゲーム機一台を喫茶店などに設置上映することにより得られる純利益額は平均月一三万四九四七円であるから、被告酔心興業及び被告永楽は昭和五五年一〇月一五日から昭和五六年六月一四日までの八ケ月間に「パックマン」無断複製ビデオゲーム機により二一五万九一五二円の、同じく被告酔心は同期間に一〇七万九五七六円の利益をそれぞれ得たというので、著作権法第一一四条第一項により右利益額は原告の被つた損害額と推定される。

よつて、原告は被告らに対し、映画の著作権の侵害による損害賠償請求として6記載の各金員の支払及び右各金員に対する不法行為後である昭和五六年六月一五日以降各支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二請求の原因に対する被告らの認否

1  請求の原因1の事実は認める。

2  同2の事実中、「パックマン」がアニメーション映画であることは否認するが、その内容が原告主張のとおりであることは認める。

3  同3中、「パックマン」が著作権法上の映画の著作物に該当することは争うが、ビデオゲーム機が原告主張のとおりのものであり、ROMが原告主張のとおりの形成過程を経て作成されることは認める。

4  同5の事実中、被告らが原告の「パックマン」の映画の上映権を侵害したとする点は否認するが、その余は認める。なお、「被告らが「パックマン」ビデオゲーム機を他から購入した際、これが無断複製品であることを過失により知らなかつたことは認める。

5  同6の事実中、被告らが原告主張のとおりの利益を得たことは認める。

三被告らの主張

「パックマン」は、映画の著作物ではない。

1  ビデオゲーム機の本来の目的は、利用者がゲーム機を自ら操作しながら、得点を重ね、ゲームを楽しむことにあり、そこに映し出された影像は、利用者がゲームを行うための単なる道具にすぎなく、本質的には、将棋、チェスの駒と盤等のゲーム用品と全く同じ性質のものである。影像に現れる登場人物に与えられた名称、役割、形状、移動の方法、相手と遭遇した際の優劣、勝敗等についても、将棋、チェスの駒等に与えられているそれと、本質的には何ら変わることがない。たとえば、王将、金将、桂馬、ナイト、クイーン、ビショップ等の名称が付され、それぞれに固有の形状と役割と移動の方法が定められ、相手と遭遇した際には、定められたルールにより相手の駒を取る(「パックマン」でいえば、モンスターを食べる。)ことができる。

以上のとおりであるから、到底ゲーム機に収録されているビデオゲームを映画の著作物と目することはできない。

2  映画の著作物を収録した物、その代表的なものとして劇場用の映画フィルム、通常の商品のように、一般の消費者に対して直接販売されるものではない。その利用は、専ら映画制作者において、映画配給業者を通じて、主として賃貸借契約の方式により、映画フィルム等を上映する劇場その他に配給する方法によつて行われる。

映画製作者は、このような方式によつて、映画製作費を回収し、利益を挙げているものであり、したがつて、映画製作者としては、映画フィルムの上映及び頒布については、その相手方、地域、期間等について、何らかの規制をする必要がある。

このように、映画の著作物については、市場での流通の方式が他の著作物と全く異なつていることから、著作権法は、特に映画の著作物についてだけ、例外的に、著作権の本来の内容としての複製権の外に、上映権及び頒布権を認めているものである。

以上の趣旨からすれば、著作権法第二条第三項にいう「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」とは、映画フィルムと同じ流通方式に従つて利用されるテレビ放送用のテレビフィムル、ビデオテープ等に収録されている著作物を指す趣旨と解され、前述のような流通方式をとらないビデオゲーム機に収録されているビデオゲームは、右の規定に該当しないものといわなければならない。

ビデオゲームの著作権については、映画の著作物としてではなく、ソフトウエアすなわちコンピュータープログラムの著作物の問題として把えるべきである。

3  ビデオゲームを映画の著作物と解することになると、当然、上映権及び頒布権が認められることになる。

しかし、「パックマン」を含め、ビデオゲーム機は、短期間に大量に生産され、迅速に、転々と譲渡されることが前提とされている商品である。すなわち、一般に、これまでの業界におけるビデオゲーム機の取引傾向では、新製品に対する需要が旺盛で、活発に取引が行われる期間は、新製品が市販されてから、人気商品で約三ヵ月ないし四ヵ月であり、その期間を経過すると、大体ユーザーにひととおり製品が行き渡るのと、利用客に飽きられるため、需要は冷え込み、取引量は急激に減退してしまうのが実情である。そして、著作権者たるメーカーは、僅かな期間内の取引によつて、多額の利益を挙げることができる。

しかるに、上映権及び頒布権が肯定されると、右のような性格の商品であるにもかかわらず、基盤取扱業者、ユーザー等は、その都度、譲渡又は上映について、著作権者たるメーカーに対し、許諾を求め、なにがしかの金銭の支払をしなければならない制約を負うことになり、却つてビデオゲーム機の大量かつ迅速な流通が円滑に行われず、取引の実態にも合わない結果となり、妥当でない。

第三  証拠《省略》

理由

一請求の原因1の事実及び同2の事実(但し、「パックマン」がアニメーション映画であることを除く)並びにビデオゲーム機の構造、ROMの形成過程が請求の原因3で原告が主張しているとおりであることは、いずれも当事者間に争いがない。

二以上に判示したようなビデオゲーム「パックマン」が、著作権法上「映画の著作物」に該当するか否かを判断するため、まず、同法の定める「映画の著作物」の解釈について検討する。

1著作権法は、著作物の一類型として「映画の著作物」を掲げ(第一〇条第一項第七号)、この類型の著作物については、他の類型の著作物と異なり、特に、「上映権」及び「頒布権」を認め(第二六条)、著作権の帰属(第二九条)、保護期間(第五四条)等について特則をおいている。そして、この「映画の著作物」には、本来的意味における「映画」のほかに、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」を含むものとされている(第二条第三項)。「パックマン」が本来的意味における映画に該当しないことは明らかであるから、以下、右の定義規定の解釈について、右の特則の立法趣旨等も勘案しながら、本件に必要な範囲で判断を示す。

2前記定義規定によれば、本来的意味における映画以外のものが「映画の著作物」に該当するための要件は、次のとおりである。

(一)  映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されていること

(二)  物に固定されていること

(三)  著作物であること

「著作物」については、更に定義規定がある(第二条第一項第一号)から、右(三)の要件は、次のとおり言い換えることができる。

(三)' 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること

右のうち、(一)は表現方法の要件、(二)は存在形式の要件、(三)は内容の要件であるということができる。

3表現方法

表現方法の要件は、前記(一)のとおりであるが、そこでは、「視覚的又は視聴覚的効果」とされているから、聴覚的効果を生じさせることすなわち音声を有することは、映画の著作物の必要的要件ではなく、視覚的効果を生じさせることが必要的要件であると解される。

映画の視覚的効果は、映写される影像が動きをもつて見えるという効果であると解することができる。右の影像は、本来的意味における映画の場合は、通常スクリーン上に顕出されるが、著作権法は「上映」について「映写幕その他の物」に映写することをいうとしている(第二条第一項第一九号)から、スクリーン以外の物、例えばブラウン管上に影像が顕出されるものも、許容される。したがつて、映画の著作物の表現方法の要件としては、「影像が動きをもつて見えるという効果を生じさせること」が必須であり、これに音声を伴つても伴わなくてもよいということになる。

本来的意味における映画は、映画フィルムに固定された多数の影像をスクリーン上に非常に短い時間間隔で引続いて連続的に投影する方法により、人間の視覚における残像を利用して、影像が切れ目なく連続して変化しているように見せかけることによつて、右の「影像が動きをもつて見える効果」を生じさせるものであるから、映画以外の著作物においても、物に固定された影像を非常に短い時間の単位で連続的にブラウン管上等に投影する方法により、右の効果を生じさせることが予想されているものと解することができる。

右に述べた要件は、映画から生じるところの各種の効果の中から、「視覚的効果」と「視聴覚的効果」とに着目し、そのうち特に「視覚的効果」につき、これに類似する効果を生じさせる表現方法を必須のものとしたものであるから、「映画の著作物」は本来的意味における映画から生じるその他の効果について類似しているものである必要はないものと解される。

したがつて、現在の劇場用映画は通常観賞の用に供され、物語性を有しているが、これらはいずれも「視覚的効果」とは関係がないから、観賞ではなく遊戯の用に供されるものであつても、また、物語性のない記録的映画、実用的映画などであつても、映画としての表現方法の要件を欠くことにはならない。

なお、本来的意味における映画の影像は、現在のところ、視聴者の操作により変化させることはできないが、影像を視聴者が操作により変化させうることは、「視覚的効果」というべきものではないから、この点は、表現方法の要件としては考慮する必要がないものと解される。

4存在形式

映画の著作物は「物に固定されていること」が必要である。

「物」は限定されていないから、映画のように映画フィルムに固定されていても、ビデオソフトのように磁気テープ等に固定されていてもよく、更に、他の物に固定されていてもよいと解される。

また、固定の仕方も限定されていないから、映画フィルム上に連続する可視的な写真として固定されていても、ビデオテープ等の上に影像を生ずる電気的な信号を発生できる形で磁気的に固定されていてもよく、更に、他の方法で固定されていてもよいと解される。

一般に著作物においては、物に固定されていることが要件とされていないから、原稿のない講演や楽譜のない音楽のように、一過性のものでも著作物たりうるが、映画の著作物においては、テレビの生放送のように、一過性のものはこれに含まれないものとするために、物に固定されていることが要件とされているものと解される。したがつて、物に固定されているとは、著作物が、何らかの方法により物と結びつくことによつて、同一性を保ちながら存続しかつ著作物を再現することが可能である状態を指すものということができる。

5内容

(一)  内容の要件は、更に次の二つに分けて考えることができる。

(1) 思想又は感情を創作的に表現したものであること

(2) 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること

(二) 右(1)のうち、「思想又は感性」は、厳格な意味で用いられているのではなく、およそ思想も感情も皆無であるものは除くといつた程度の意味で用いられているものであつて、人間の精神活動全般を指すものであると解するのが相当である。したがつて、「思想」と「感情」の区別も特に問題とする必要がないといえる。

また、「創作性」については、いわゆる完全なる無から有を生じさせるといつた厳格な意味での独創性とは異なり、著作物の外部的表現形式に著作物の個性が現われていればそれで十分であると考えられる。

(三)  前記(2)の要件のうち、「文芸、学術、美術又は音楽」というのも、厳格に区分けして用いられているのではなく、知的、文化的精神活動の所産全般を指すものであると解するのが相当で、該著作物がどの分野に属するかを確定する実益はない。

なお、知的、文化的精神活動の所産といいうるか否かは、創作されたものが社会的にどのように利用されるかとは、必ずしも関係がないというべきである。すなわち、創作されたものが、芸術作品として鑑賞されようと、学究目的で利用されようと、全くの娯楽目的で利用されようと実用目的で利用されようと、また、本件に即していえば、遊戯目的で利用されようと、そのことは、著作物性に影響を与えるものではないと解するのが相当である。

6次に、映画の著作物には、特に上映権と頒布権が認められているが、このことから、映画の著作物の範囲について何らかの限定をしなければならないかどうかについて検討する。

映画の著作物について特に上映権と頒布権が認められている立法趣旨は、主として、劇場用映画フィルム配給の実態を保護するためであるといわれている。しかし、著作権法は、劇場用映画に限り上映権等を認めているわけではなく、広く映画の著作物全般についてこれらを認めているから、劇場用映画でない映画の著作物、例えば市販されているビデオ・カセットや一六ミリフィルムに収録されている映画、家庭内で撮影されたビデオテープや八ミリフィルムでその内容が著作物性を有するものについても、上映権等が認められているものと解するほかはない。そして、少なくとも、市販の一六ミリフィルムに収録された映画や家庭内で撮影された八ミリフィルムでその内容が著作物性を有するものが立法当時広く存在していたことは明らかであるから、著作権法が映画の著作物全般にわたり上映権等を認めたことは、前記の立法趣旨だけでは充分に説明し切れないものである。しかしながら、立法の動機がどのようなものであつたにせよ、著作権法が、劇場用映画とは全く取引実態を異にするものであつても、映画の著作物に該当する以上、上映権等を認めるとの立場をとつたものと解すべきであることが明らかであり、取引実態が異なることを理由に上映権等を制限したり、映画の著作物に該当しないものとしたりすることは、現行法の解釈としては採用できないというべきである。

三以上の著作権法の解釈に基づいて、「パックマン」が映画の著作物の要件を充足しているか否かについて検討する。

1表現方法

「パックマン」は、テレビと同時に影像をブラウン管上に映し出し、六〇分の一秒ごとにフレームを入れ替えることにより、その影像を動いているように見せるビデオゲームであることは前判示のとおりであり、これが映画の著作物の表現方法上の要件である「映画の効果に類似する視覚的効果を生じさせる方法で表現されている」との要件を充足することは、前二における判示から明らかである。

2存在形式

ビデオゲーム機の構造は前判示のとおりであり、要するに、ブラウン管上に映し出される影像は、絵柄、文字などすべてそのままあるいは分割してそれらを生ずる基本的には二進数の電気信号を発生できる形でROMに記憶されており、ブラウン管上にはROM中に記憶されているもの以外の絵柄、文字などが現われることはない。

アトラクト影像及び挿入影像は、ROM中に電気信号の形で記憶されているプログラム(命令群)の多種、多様な命令が順次CPUにより読み取られ、右命令により、ROM中に電気信号の形で記憶されているプログラム(データ群)の中から抽出された各データがブラウン管上の指定された位置に順次表示されることにより、全体として連続した影像となつて表現される。アトラクト影像及び挿入影像は、このようにプログラム(命令群)の命令により順次プログラム(データ群)から抽出されたデータがブラウン管上に表示され、その影像はプレイヤーのレバー操作によつて変化することはなく、常に一定の連続した影像として現われる。

一方、プレイ影像は、プログラム(命令群)の多種、多様な命令が順次CPUにより読み取られることは、アトラクト影像及び挿入影像の場合と同様であるが、右読み取られた命令がそのままではなく、プレイヤーの操作レバーの操作によつて与えられる電気信号により変化させられて、これによりプログラム(データ群)中から抽出されるデータの順序に変化が加えられる。したがつて、ブラウン管上に映し出される映像もプレイヤーのレバー操作により変化する。しかしながら、プレイヤーが操作レバーを全く操作しなかつた場合には、常に同一の連続した影像がブラウン管上に映し出されるし、理論上は、プレイヤーが同一のレバー操作を行なえば常に影像の変化は同一となる。また、いかなるレバー操作により、いかなる影像の変化が生ずるかもプログラムにより設定されており、したがつて、プレイヤーは絵柄、文字等を新たに描いたりすることは不可能で、単にプログラム(データ群)中にある絵柄等のデータの抽出順序に有限の変化を与えているにすぎない。

そうすると、アトラクト影像、挿入影像及びプレイ影像のいずれについても、プログラム(データ群)中から抽出したデータをブラウン管上に影像として映し出し再現することが可能であり、その意味で同一性を保ちながら存続しているといいうる。

以上によれば、「パックマン」のブラウン管上に現われる動きをもつて見える影像は、ROMの中に電気信号として取り出せる形で収納されることにより固定されているということができる。

3内容

「パックマン」の内容は前判示のとおりで、これに<証拠>によると、「パックマン」にはパックマンと四匹のモンスターが登場し、このうちパックマンは円形で一方向に口と目があり、口は進むのにあわせてパクパクと開閉し旺盛な食欲で次々にエサを食べていくこと、四匹のモンスターはそれぞれの進み方に規則性があり、ヒラヒラした裾と目があり、それぞれが別の彩色を施され、ユーモラスな印象を与える表情をしていること、そしてパックマンがエサを食べる際のしぐさ、あるいはモンスターに食べられて消滅する際の有様、またモンスターが逆にパックマンを食べられて目だけになつて巣に逃げ帰る際のしぐさ等の影像の動的変化、プレイヤーがゲーム機にコインを投入した際あるいは一定条件を満たした際に演奏される目録(二)、(三)の楽譜の音楽とによつて表現されているところは、「パックマン」に独特のものであることが認められ、これを覆えすに足る証拠はない。そうすると、ビデオゲーム「パックマン」は、著作者の精神的活動に基づいて、その知的文化的精神活動の所産として産み出されたものであり、著作物性を有すると認めることができる。

なお、ビデオゲームのソース・プログラムがその作成者の独自の学術的思想の創作的表現であり、著作権法上保護される著作物に当り、オブジェクト・プログラムは右ソース・プログラムの複製物と認められるということが、ビデオゲーム機の表示装置上に表示される影像の動的変化又はこれと音声とによつて表現されているところを映画の著作物として保護することができるか否かの判断に影響を及ぼすことはないというべきである。なるほど、例えば、シナリオ等言語の著作物に基づいて映画の著作物を創作する場合には、映画化の段階で新たな著作活動が加えられるのが通常であり、一方、ビデオゲームの作成において、言語の著作物としてのソース・プログラムを創作し、これをオブジェクト・プログラム化してビデナゲーム機のROM中に収納した場合、このオブジェクト・プログラムを忠実に実行すれば、表示装置上にソース・プログラムが意図したとおりの影像の動的変化が表示され、ソース・プログラムひいてはオブジェクト・プログラムの影像化のためには何ら新たな著作活動は加えられていないといいうる。しかし、言語の著作物と映画の著作物とはその外部的表現形式、存在形式の相違によつて別個の著作物性を有するものとして著作権法上規定されているのであつて、影像の動的変化又はこれと音声とによつて表現されているところそのものが著作物としての創作性を有していると評価でき、これに固定性の要件が加われば、映画の著作物と認めるに充分というべきである。したがつて、ビデオゲームのソース・プログラムに言語の著作物を認め、これをビデオゲーム機により実行して映し出される影像の動的変化又はこれと音声とによつて表現されているところを映画の著作物と認めることは、著作物性をとらえる観点が全く別個であるということを意味するにすぎず、一箇の著作物を法的に二重に保護することにはならない。

4以上認定したとおり、「パックマン」は映画の著作物に該当し、前判示のとおり請求の原因1の事実は当事者間に争いがないから、著作権法第一五条、第一六条の規定によりその著作権者は原告であると認められる。

四被告らはそれぞれ「マイアミ」との名称で都内で多数の喫茶店を経営していること、被告らは他から「パヅクマン」ビデオゲーム機をこれが無断複製品であることを過失により知らないで購入し、被告酔心興業及び被告永楽においてはその経営する店舗にそれぞれ少なくとも二台の「パックマン」無断複製ビデオゲーム機を設置、上映し、昭和五五年一〇月一五日から昭和五六年六月一四日までの八ヶ月間に各二一五万九一五二円の利益を得たこと、被告酔心は同じく少なくとも一台の「パックマン」無断複製ビデオゲーム機をその経営する店舗に設置、上映し同期間内に一〇七万九五七六円の利益を得たことは当事者間に争いがない。

そうすると、著作権法第一一四条第一項の規定により被告らが得た右利益額は原告の被つた損害額と推定されるから、被告らは各右金員及びこれに対する不法行為後であることが明らかな昭和五六年六月一五日以降各支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。

五(結論)

以上の次第で原告の被告らに対する本訴請求は、いずれも理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条の、仮執行の宣言につき同法第一九六条の各規定をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(牧野利秋 飯村敏明 高林龍)

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